岡山釣行記

岡山市南西部に位置する児島湾に注ぐ各河川はヘラブナの宝庫


 関東の紅葉も終わり、師走。吹く風も冷たくなった。日本列島は不況風が吹きまくり、心許ない懐具合に我慢と辛抱の生活を余儀なくされている。そのうっぷんをヘラ釣りで少しでも晴らせればよいのだが、寒さが厳しくなればアタリも出ず、かえってストレスが溜まる。まして野釣りではなおさらだ。待って、待って、待ちぬいての1枚、釣りも我慢と辛抱のツラーイ季節。で、冬に入る前に野ベラと遊んでしまおうと、11月下旬(26〜30日)、岡山に行ってきた。
 岡山県は川が多い。そのほとんどにヘラがいる感じ。とくに児嶋湖・児島湾に注ぐ岡山市周辺の各河川は、上手くポイントに当たれば、私のような下手の横好きヘラファンであってもそれなりに釣れる。とにかく魚影が濃いので数釣りができ、大型ベラ狙いもできるのである。
 事前に、関西在住の知り合いSさんから、楽しめる釣り場を教わった。幸田川、百間川、四番川、妹尾(せのお)川だ。
 27日、岡山市の南東部、水門町を流れる幸田川へ。
 ポイントは下流部にある水門から上流1㎞までの間で、モジリとアワづけが出ているかが入釣の目安。ということで、上流から下流までモジリ、アワづけを探したがなく、結局天性の勘を頼りに、下流部の辛島橋の下手50mの左岸に入釣。周辺は刈り入れの終わったのどかな田園風景が広がっていて、その静かな環境にはとにかく釣れそうな雰囲気があったからである。
 竿13尺でタチ1mほどの底釣り。ウキは15年以上愛用している『葉舟 二葉13』。オーソドックスタイプだが丁寧な作りが気に入っている。が、2時間やったがヘラは来ない。ウキの周りにアワづけもなく、モジモジからチクと出るアタリはクチボソかタナゴ。2時間半で我慢の限界、ヘラアタリなしで諦めた。天性の勘で入釣したポイントも選定の勘が外れた感じ。
 幸田川は、Sさん推奨の一番釣り場だったのに……。
 Sさんの話では、幸田川は干潮時は水門を開けて放水が行われるため、急な流れがつき水位が下がることもあるが、晩秋から冬にかけての低水位期はほとんど流れはつかない。9寸〜尺級の魚影の濃さは岡山県下でもトップクラスで、冬でも安定した釣りができるという。
 上流部へは岡山ブルーライン西大寺インターから南へ2kmほどにある山南中学校の南角を右折、200mほどで川に出る。川幅は30mほど、水深80㎝前後。水位が高い時はこの上流部に大量のヘラブナが遡上、20〜30㎝級の魚影が濃く、山南中学校裏にある橋の上下流の両岸は好ポイントに。入れ食いもよく見られる。
 中流部にあたるJA倉庫裏は尺前後のヘラ主体。下流部の水門近くは2m前後の深場があり、尺〜36cm級が期待できるという。
 さて、気を取り直して百間川へ転戦だ。「魚影の濃さは抜群」「絶対に釣れる、オデコなし」の、Sさんお墨付きのお推めポイント、通称オムロン前に入った。百間川の右岸、オムロン工場の前で、定評ある好ポイントらしい。教わったとおりにアシ原を分け入って岸辺に出る。川幅は80mほどか、アシ原の広がる対岸の向こうには低い山並み広がっている。アシ原の岸には釣り座跡がいくつもあって、一目で実績のあるポイントと分かる。で、釣り台がセットしやすい一番端の座跡に入る。竿は15尺で十分と聞いていたが、なんとか型をみたいとの欲もあり、17尺を出す。タチ2・5mの底釣り。ウキは『葉舟 二葉17』、エサは両グルテン
 風もなく暖かい陽気、そのうえ流れも緩やかで釣りやすい。これでアタリが出始めたら入れ食い、なんていう勝手な思いでエサを打つ。第1投から2時間、ウキは絵に描いた餅状態。野釣りだからと粘ってみたのだがジャミアタリさえ出ない。ちなみにSさん、11月8日の所属例会(2枚長寸制)でこのポイントに入り1投目からアタリが出て、小ベラながら入れ食いになったという。2枚とも37・4㎝の計74・8㎝で優勝。「昨日まで釣れていた」はよくあること、致し方なしだが、いやはやなんとも……の感。「Sさん、未熟者でゴメン」。
 28日、まず百間川下流の右岸の土手の反対側を流れている水路、四番川へ。
 四番川の最下流は周囲2㎞ほどの四角い貯水池状で、東岸の道路の向こうは海。貯水池状の上流は、川幅は20mほどの水路だ。四番川右岸にある『こんにゃく工場』前で竿14尺を出した。対岸には先着の地元釣り人4人が竿12〜13尺で遊んでいる。たまに竿が絞られて30㎝前後のヘラが釣れていた。タチ1本の底釣りで始めたが、水門が開いているのか右に、時に左にと速い流れが出て釣りにくい。で、通し仕掛けにするがやはり流される。対岸の釣り人がまた竿を絞り「いま3枚目」の声。それから15分、私のウキがいきなり食い上げのアタリを出した。合わせると強い引きで右に左に走る。慎重にやりとりしてやっと玉網に収めたそれは30㎝はあるヘラに近いマブナだった。先ほど思わず「やったーっ!」と心で叫んでいたのが恥ずかしい。ションボリ、である。それからも釣れてくるのはクチボソ、タナゴばかり。我慢も限界、諦めた。
 29日も四番川に行った。今度は貯水池状の西岸、住宅地の前のポイント。岡山で知り合ったベテランのヘラ師がわざわざ案内してくれた。出れば40㎝オーバーという一級ポイントらしい。道路上から水面までは1・5mほどあるので、竿17尺を出す。ちょっと釣りづらいが、40㎝オーバーが釣れるならなんのその。東岸にある道路の向こうから船の汽笛がときおり聞こえてくる。汽笛を聞きながらのヘラ釣りは初めてだ。
 竿17尺はベテランヘラ師のアドバイスによるもの。ミチイトは1・5号、ハリス0・8号、ハリは上下とも関スレ8号とした。ウキは「葉舟 二葉13」。タチは70〜80㎝ほどで両グルテンの底釣り。池面のあちこちでモジリやハネが出る。時にはドボンの大きな音とともに、コイが水面上に踊る。これはヤバイ。
 エサ打ち1投目からトップがもやもやと動く。徐々に上がってエサ落ち目盛の赤がでたところでズンと大きなアタリが出た。合わせたが空振り。魚がもう寄ったのか、これは釣れるかも、の期待。
 エサ打ち4投目。トップがナジミかけたときにいきなりのズバッと消し込んだ。合わせがつい強くなってハリス切れ。40㎝級か、の期待。
 ハリスを付け換えての1投、またもやトップがもやもやする。魚の散る気配はない。今度はきれいなツン。合わせるとハリ掛かりした。寄せようと思って立ち上がったが、あっという間に沖目にのされてハリス切れ。魚の姿を見ずじまいだ。40㎝級か。コイか。それとも、いやな予感が。
 こうハリス切れが続くとマズイと思っていた矢先に、今度は1・5号のミチイトまで切られ、「葉舟 二葉13」も水面下に消えた。ああー、葉舟が……、ボラれた。
 気を取り直して仕掛けを作り直す。切られてもミチイトは1・5号、ハリスも0・8号、ハリも関スレ8号。ウキは「葉舟 二葉15」と一回り大きめに。
 釣り再開の第1投とエサ打ち点を見ると、水面下に消えたはずの「葉舟 二葉13」がボディを出して、ゆらゆら右へ左へと動いている。魚がついているようだ。ミチイト2号に直接ハリを結び、ハリに板オモリを巻き付けてウキ回収作業だ。見事? 5投目で引っ掛かる。慎重に引き寄せると運良く魚が外れてウキ回収に成功。やれやれだ。この間に要した時間はおよそ20分。
 この空白時間にもかかわらず、再開の1投もトップがなじまず、そのうちにボディの付け根を出したまま右へ動き始めた。
 このウキの動き、なぜか釈然としないが、とにかく合わせると、また竿が大きく伸される。堪えて今度は玉網に収めることができた。玉網に収まったのは40㎝オ−バーのヘラでもなく、コイでもなく、40㎝近いボラ。正体見たりだが、もっと早く気がつけよと誰かに言われそう。とはいえ初めての釣り場、40㎝オ−バーが頭に刷り込まれていたので、判断が鈍った。B級釣り師の面目躍如といったところか。ウキもボラれずにすんだし……。この釣り場は、今日は駄目、日をあらためての再挑戦ということで、撤収となった。
 次ぎに行ったのが妹尾川。倉敷川につながり、最下流の水門から2㎞上流の国道30号線、さらに上流500mまで、どこもポイントといえそう。入ったのは最下流の水門から2㎞ほど上流の国道30号線の上手左岸で、川幅は20mほど。一部護岸された足場のよい階段状に釣り台を置いた。
 竿は13尺、タチ1・5mの底釣り。両グルテン。緩い流れはついているがバランスで十分。エサ打ち10分ほどできれいなツンのアタリが出始め、時々アタリが遠くなることはあるが、ほぼ入れアタリで、きれいなヘラが釣れてきた。型は20〜30㎝級がほとんど。たまにクチボソ、タナゴも混じるが、往年の佐原の釣りが思い出され、懐かしい気分になる。3時間ほどの釣りで20枚は上出来の釣りといえる。
 今回は、オデコ続きとボラとの闘いで苦労? させられたが野釣りではよくあること。最後にはヘラの引きが味わえ、申し分なしだ。とはいえ、次の釣行ではもっと楽しめる釣り情報をとっておきたい、というのが反省点。

※今回は、幸田川、百間川、四番川、妹尾川で竿を出した。岡山県にはこの他に、吉井川、旭川笹ヶ瀬川倉敷川、幸崎川などの川や水路。また野池、溜池、ダム湖があり、「数釣りよし、大型ベラ狙いよし」の絶好ヘラ釣り場が揃っている。参考までに、鴨川の下流に位置する七区調整池は3月下旬から5月連休までの乗っ込み期間中は、地元や関西方面の50㎝オーバー狙いのファンで賑わうそうだ。来春、みなさんもスケジュール調整して、たまには遠征釣行してみてはいかがだろう。釣行記というよりもガイドになってしまったことに、ご容赦のほどを。

にしもと

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